「ごめんなさい、あたしっ……」


どうしようかと涙が浮かびそうになったとき、ローズの頭にアリムがそっとふれた。


「ケガ、ないか?」


「あたしは……平気」


(だって、アリムが守ってくれたじゃない)


「じゃぁ、行くか」


何事もなかったかのように立ち上がるアリム。


「ちょっと、待って! 大丈夫なの!?」


「あぁ。オアシスに着けば水も薬草もある。平気だ」


だけどその顔は苦しげで、包帯代わりに巻いたばかりのドレスはすでに赤く染まっていた。


「このまま動くなんて危険だわ。どんどん血が出てる」


「大丈夫だって、言ってんだろ」


「でも――!」


言いかける言葉を遮るように、アリムの唇がローズの唇に触れた。


やわらかくて、暖かい。


「お前、俺の事好きにならないって言ったけど……俺は、案外お前の事好きかもな」


ぶっきらぼうにそう言い、アリムは歩き出した。


その後ろから見える耳は真っ赤になって照れていて……ローズは思わず、頬を緩めたのだった。