「全然王子様って感じがしないし」


「王子? 俺は街の商人だ」


なに勘違いしてんだ?


という顔を浮かべるアリムに、唖然として言葉を失うローズ。


「おい、お前今まで俺が王子だと思ってたのかよ」


これは傑作だ!


そう言うように、お腹を抱えて笑い始める。


その大きな笑い声に、ホワイトが驚いて目を開いた。


「……どういう事よ……」


ローズの目には悲しみと怒りが見え隠れする。


「王子って……王子がお前を助けるなら、とっくの前に助け出されてるだろ?」


アリムの言葉がチクチクと胸に刺さる。


本当はわかっていた。


時間が経てば経つほどに、それが現実味を帯びてきていたから。


誰も、自分を助けようとはしてくれていない。


最初の頃は何人も勇敢な王子が塔に来ていたと、魔女は言った。


でも、それをそのまま信じられるハズもなく……。


気がつけば、涙が頬を伝って落ちた。