虹鳥は隔離された塔の中から見える、唯一の鳥だった。


高い場所まで飛んでくるので、窓にとまって一緒に過ごしたこともある。


だから、ローズはそれを食べてしまうという発想が衝撃だったのだ。


「あの、あたし……その鳥は食べられないわ」


「どうして? あぁ……ちゃんと羽はちぎって焼くぞ?」


羽が付いたままなのが嫌だと勘違いしたアリムは、片手で虹鳥の羽を数本引きちぎった。


「やめて!」


思わず、叫ぶ。


アリムに悪気がないのはローズだってわかっている。


でも……あまりに残酷に見えてしまった。


「なんだよ。羽がない方が食べやすだろ?」


「そうじゃないわ! あなたって最低!」


「はぁ? 意味わかんねぇ……」


「もういいわ。元々これはあたしの物語に不似合いなストーリーだもの。こっちから願い下げだわ」


言い捨てて、洞窟の出口へと向かう。


「どこ行くんだよ!」


「どこだって関係ないでしょ!?」


そう怒鳴ると、もう後ろからアリムの声は聞こえてこなかったのだった……。