アリムの言葉に、ローズは「わからない」と、呟いた。


塔の外へ出られたけれど、この状況が嬉しいのかどうかさえ、今はまだわからなかった。


この青年が、あまりにも突飛すぎて。


自分の物語には不似合いだったから。


2人の服と竜のウロコが渇いたころ、外の豪雨の音が少し小さくなっていた。


「腹、減ったろ」


「ええ、そうね」


塔から出て何時間経ったかわからないけれど、確かに空腹だ。


「夕飯を取ってきてやる。ちょっと待ってろよ」


「夕飯?」


「あぁ。どうせ今日はもう動けない。ここで一晩明かす事になる」


(こんな場所で!?)


ローズは思わず辺りを見回した。


自然にできた洞窟が奥の方まで続いていて、その先は真っ暗で何もみえない。


もしかしたら、何か危険な野生動物が住んでいる可能性だってある。


そんなローズの不安に気づく素振りもなく、


アリムは大きな枝を一本だけ持ち、洞窟を出たのだった。