「塔で?」


驚き、思わず声が大きくなる。


「どうして? あんな不便な場所で暮らすことないだろ?」


「わかってるわ。でも、塔に残してきた兵士たちを置いてはおけないって、おばあ様が。それなら、みんなで塔で暮らそうって事になったの」


まさかそんな話になるとは思っていなかったアリムは頭をかかえた。


昨日の売り上げを見ると、この調子で行けば隣の土地を買ってローズの親の住む家を建てることができると、そう考えていたのだ。


「助けてもらったのに……また戻ることになって、ごめんなさい……」


ローズが鼻をすすりあげる。


アリムはその体を強く抱きしめた。


「毎月、月の終わりの日に会いに行く。ホワイトに乗って」


「あたしも……塔には赤い竜がいるから、それに乗っていくわ」


「必ずだ。忘れんじゃねぇぞ?」


「アリムこそ」


囁きあい、唇を重ねる2人。


その日のキスは、涙の味がした……。