コンコン。

「どうぞ」
まるで俺が来ることが分かっていたように、月子先生は迎えてくれた。
「樹里亜のカルテにロックをかけました?」
「ええ」
「なぜですか?」
「本人の希望でね。今日一日時間が欲しいって言うから」
「そんなに悪いって、事ですか?」
恐る恐る言った言葉に、
「本人に訊きなさい」
月子先生は取り合ってくれない。

「お願いです、教えてください」
俺は頭を下げた。
「ダメよ」
「樹里亜と連絡がつかないんです」
さすがに月子先生の顔色が変わった。

「でも、教えない。今日一日だけって、樹里亜と約束したの。あの子だって子供じゃないんだから、バカなことはしないわよ。それに大樹、あなた過保護すぎよ。もう少し放って起きなさい」

過保護って、そんなこと言われなくても分かっている。
でも、放っておけないんだ、
危なっかしくて、つい手が出てしまう。

「とにかく、主治医としての守秘義務は守るわ」
そういった切り口を閉ざした。
「分かりました。もういいです」
俺にしては珍しく、声を荒げてしまった。