私は特急と新幹線を乗り継いで、東京へ向かった。
他に土地勘のあるところもなく、結局大学時代を過ごした街に逃げ込むことにした。
そして、東京に向かった理由のもうひとつが、
『もしもし樹里亜?久しぶりね』
車中からかけた電話に出てくれた、美樹(みき)おばさん。
父さんの従兄弟にあたる人で、私が大学に通っていた頃には何かとお世話になった。
私のことを嫌いな親戚が多い中で、数少ない味方。

『突然どうしたの?何かあったの?』
普段はかけない私からの電話に、不思議そうな声。

「今日、泊めてもらえますか?」
『いいけど・・・どうしたの?家出?』
「まあ。そんな感じです」

しばらく考え込んでいたおばさん。
『樹三郞さん達には黙っておけばいいのね?』
「はい。お願いします」
電話を持ちながら、頭を下げた。
見えるわけはないけれど、気持ちは伝わると信じたい。

『でも、見つかるのは時間の問題よ』
分かっている。
きっと2日もすれば探しに来るだろう。
それまでに、何とか考えないと・・・

「明日からは、大学時代の友人をあたってみますから」
『一体何があったの?』
「それは・・・」
電話では伝えきれない。

『まあいいわ。とにかく来なさい』
美樹おばさんは深くは詮索せずに、私を泊めると言ってくれた。
『ありがとう、おばさん』
何度も礼を言って私は電話を切った。