入院中は、渚が泊まり込みで付き添いをしてくれた。

しかし、検査の結果は一進一退。
良かったり悪かったり。
このままちゃんと出産までいけるのかもまだ分からない。

「ねえ渚、こっちに来て」
真っ暗になった病室で、ソファーに横になっている渚を呼んだ。

渚は近寄って来てベットの端に腰掛け、
「どうしたんだ?」
不思議そうに私を見つめた。

「不安なの。結婚も出産も、これからのことも不安で仕方ない」
私は東京で気持ちの整理をしてここに帰ってきた。
そのことに迷いはないけれど、先のことを考えるのが怖い。
油断すれば大きな流れに飲み込まれてしまいそうな気がして、気持ちの休まる暇がない。

「樹里亜」
「ん?」
「俺は君に出会えたことに感謝しているよ。一緒に暮らしたことに後悔はない」
うん。
「私も渚で良かったと思っている」
「じゃあ、もう考えるな。今できることだけを考えよう」
そう言うと、立ち上がり私の両肩に手を置く。
そして、上からゆっくりと、渚が近づいてきた。
上を向いているからだろうか、まずは鼻があたる。
フフフ。
笑っていると・・・唇が触れた。
この息遣いも、ぬくもりも、忘れずに覚えておこう。
私が命がけで愛した人だから。