当然、渚もついてきた。

本当は1人で行きたいんだけれど、
「渚、先に帰っていいよ」
と言ったのに、
「嫌だ」
それで終わった。


「どうぞ」
少し不機嫌そうな月子先生に呼ばれ、私と渚は診察室へと入る。

「へー、意外ね。先生がパートナーだったの?」
渚を見つめる月子先生。
「黙っていてすみません」
渚が頭を下げた。

ちょっとの間だけ渚に説教をたれた月子先生は、私の診察を始めた。


「うーん。あんまり良くないわね。貧血が進んでる。血小板も落ちてきているし」
「はあ」
相づちを打ちながら、なんだか嫌な予感がした。
月子先生がこんな言い方をするときは、入院を勧められるとき。
嫌だなあ・・・

「しばらく、入院する?」
えええー、やっぱり。
私は黙り込んだ。

「入院で、改善するんですか?」
渚が嫌なことを聞く。
改善しなかったら、どうだって言うのよ。

「それは、分からないわよ。どれだけの治療効果があるかなんて、誰にも分からないわ」
月子先生も期待を持たせるようなことは言わない。

「あのー、後1週間だけ自宅安静じゃダメですか?」
ねばってみた。
できれば家にいたい。
「樹里亜、わがまま言ってないで言うことをきけ」
渚はすっかり入院のつもりになっている。
月子先生も点滴や検査のオーダーを始めてしまった。