古田センセーについて知っていることはほとんどない。

例えば、センセーの年齢は非公開らしい。高校2年のいちばん最初のホームルーム、自己紹介をしたセンセーは『古田 晃です。年齢は非公開。担任よりは若いです』と言ってクラス中の笑いをとった。

その時はみんな、笑いを取るだけだと思っていた。けれど、センセーは今現在ーー私が高校3年生になった今も、年齢を明かしていないのだ。

見た目は二十代。年もきっとそれ相応だとは思う。


誕生日、血液型、すきな食べ物、きらいな食べ物。趣味や経歴もーー答えろと言われたらどれもわからない。


ただ、センセーの笑った顔はなんだかすきだ。背筋はいつも少しだけ曲がっていて、細く華奢な身体には白シャツがとてもよく似合う。くせ毛の黒髪は他の先生たちよりも随分と長い。目にかかる前髪を揺らしながら、センセーは私をバカにしたようにけらけらとよくわらう。

わたしが見た目を変えても、センセーだけはわたしに対する接し方を変えなかった。

恋じゃない。憧れじゃない。だけど確かに古田センセーはわたしの中でトクベツで、知りたいようで知りたくない人。


ずっと、わたしの前を歩いていてほしいひとだ。