まさか〝先生〟という立場の人にそんなことを言われるだなんて思ってもいなかった。古田センセーはにっこり笑って、『すきなことが見つかったら、進路希望調査を白紙で出さなくてもよくなるかもしれないし、ね』と付け足した。
 今思い返せば、きっと忙しい担任の代わりに、副担の古田センセーが進路希望調査を白紙で出した私にアドバイスをするようなつもりだったんだろう。でも思いの外わたしには古田センセーの言葉は重く響いた。だってそれは、『変わっていい』と誰かに背中を押されたことと同じだったんだ。

 変わることは案外簡単だった。
 スカートを折り曲げて、髪を染めて、ピアスホールを片耳あけた。まつげを真っ直ぐ伸ばすマスカラと、赤すぎないリップをつけたら戦闘の合図。─────でもたったそれだけ。
 外見を変えただけで、周りの人の評価も、見る目も、あっという間に変わった。変わってしまった。