「じゃあ、俺と式のあとご飯食べに行こう。お祝いで奮発するから」
なんと、信楽さんがお祝いしてくれるとは思ってなくって、私はビックリしつつも笑顔で返事をした。
「やった! 信楽さんが連れてってくれる所は美味しいとこばっかりだもん、楽しみ」
私の返事で、卒業式後の予定が決まった。
良かったボッチにならなくってとホッとしている私とは裏腹に、信楽さんはこの時からちょっと緊張していたんだと聞かされた時は、私も驚いたけれど納得したのだった。

卒業式は恙無く終了し、仲の良い友達と証書を持って写真を撮った。
この仲間と、この学校で過ごした三年は楽しくって仕方なかった。
怠惰だった私でも見捨てなかった、そんな友人達には感謝である。
一人は大学に、一人は短大に、もう一人は専門学校に行く。
私たちの進路はバラバラだけれど、みんな地元から通えるところなので、これからも駅とかで会いそうだね! なんて言って別れた。
私が信楽さんに向かっていく背後で、彼女達が言ったのはのちのち聞くことになったけど。
「ちょ! あのイケオジ間違いなく遥香ラブだね!」
「間違いないね、あんな目をして遥香を見てるもの」
「これ、遥香は気づいてるの?」
少しの沈黙のあと、友人達は言った。
「絶対気づいてない! イケオジが不憫。でも、あの子鈍感だから、ストレートに言葉にしないとダメだよね?」
「がんばれ、イケオジ!」

という会話だったと、春休み中に会った時に言われて、私がお茶を吹くハメになったのは言うまでもなかった……。