冬、受験シーズンも真っ盛りになるとカメラの月一授業は受験の学科対策に切り替わった。
元々やる気はなくてもしっかり授業は受けてたし、そこそこだったが志望校はそこそこでも模試の結果ちょっと怪しいB判定だったので本腰をこちらに入れるしかなかった。
浪人なんて出来ないし、学校で学ぶのも一つの手だと思うから。
そんな私に月一から週一に変えて、信楽さんが家庭教師に来るようになった。
聞くと、信楽さん写真は独学と卒業してから出版社に入って仕事で仲良くなったカメラマンさんに師事して学んだので、大学は普通のとこと聞いて軽く家庭教師をお願いしたら、とんでもなかった。
信楽さんは出身は長野、そこから関西の国立大卒で東京で就職したらしい。
出身大学聞いてポカンとしたのは言うまでもない。
めちゃくちゃ頭いいよね?ってなりましたとも。
しかも、元は理系らしくって数学も、化学も、物理も強かった。
おかげで、年末最後の模試ではA判定をとり、安心して試験を受けて、高校卒業前に無事に志望校への合格を手にしたのだった。
正直、後半の信楽さんの家庭教師期間がなければ合格は厳しかったと思う。
そして写真学科への試験においても、コンテストでの入賞経験は大きかった。
試験課題にも、真摯に向き合ったからこその合格だと思う。
こうして迎えた三月の卒業式。
私は青天の霹靂に見舞われた。
この日、お母さんは朝から担当患者さんの陣痛が始まり急遽仕事に行くことになった。
「ごめんね、こんな晴れの日も行けなくって」
バタバタと支度をするお母さんに私は言った。
「卒業式くらいどうってことないよ。新たな命と頑張るお母さんを支えるのがお母さんの仕事でしょ?頑張ってきてね」
そう、心から言えるのも、私にも目標ができたからかもしれない。
「ありがとう。行ってくるわ!」