夏までの怠惰だった私はどこえやら、その後はいつになくあれこれと動き回り、勉強にも力を入れて、受験対策も考え始めた。
そんな頃に、貰った名刺から信楽さんに写真学科の受験を伝えると、月一でプロのいろはを教えて貰えることになった。
なので、現在は月一で都内のスタジオに出かけて信楽さんのアシスタントをしたりしつつカメラを勉強中だ。

好きなことをするのは楽しい時としんどい時とが半々なことにも早々に気づいた。
けれど、私は投げ出して怠惰な私には戻らないと必死だった。
思い通りの一枚が取れた時の嬉しさ、その写真を見て人が感想や綺麗や好きだと言ってくれることが何よりの励みになった。

そうして私は高校生活の残り一年は、かなりの速度と充実さを持って過ごすことが出来た。
怠惰なときでは得られなかった充足感に、私はすっかりハマってしまったのだろう。

そんなおり、私は前回よりも規模は小さいものの、フォトコンテストでグランプリを撮った。
その写真は、信楽さんのサーフィンの姿を撮ったもの。
それも、最初のじゃなくて月一でカメラについて学ぶようになってから撮ったもの。
ちょうど出会って一年が過ぎた次の夏のことだった。
その写真コンテストは、地域の海の写真コンテストで地元ならではの写真の応募に限定されていた。
ちょうど、誘われて一年前のように私は波に乗る信楽さんを撮った。
その日はサーフィン仲間も居たので様々な人を撮ったが、一番光って見えた被写体は信楽さんだった。
なので、本人の了承を得てこの商に応募していた。
グランプリを撮った時は、最初は「モデルが良いからな!」
なんて茶化していたが、送った写真を見ると信楽さんは私の頭を撫でつつ言った。
「グングン成長しやがって、俺もうかうかしてらんねーな」
そう言って不敵に笑った。