「お母さんは、遥香ちゃんがこの道に進むと言ったらどうしますか?」
続いた質問にお母さんは表情も変わらずに、にこやかに答えた。
「この子はきっとこの道に進むと思ってましたよ。だから、今回の受賞はいいきっかけだと思います」
その言葉に信楽さんは先を促すようにお母さんを見つめた。

「だって、遥香は物心着く頃から本物のカメラを玩具として与えられてて、写真を撮っては褒められていたんですもの。本人はすっかり忘れてましたがね」
クスリと笑ったお母さんに、信楽さんは納得したように笑って、そして言った。

「遥香ちゃん、君がこの世界に飛び込むならその時は連絡をくれれば手助けしよう。まぁ、この受賞がバネになるからやっていけるとは思うよ。俺も俺もこの賞出身だからね」

そう言って、信楽さんは私に道のひとつを指し示してくれたのだった。

授賞式はとっても立派で、私は緊張していたけれど何とかこなせた。
受賞者インタビューも聞かれたけれど、どう答えたか覚えていない位の緊張っぷりだった。
後日、そのインタビューと受賞写真が載った雑誌はうちに届けてくれるそうだ。
本になるまで受け答えがわからないのも、なんとも言えないが仕方ないとすっぱり諦めて切り替えた。

こうして授賞式を終えて、私は出していた進路希望を急遽変更することを担任に伝えて、受験勉強に本腰を入れることになったのだった。