冬に差し掛かる頃、青少年フォトコンテストの授賞式は行われた。
会場は有名なホテルの宴会場だ。
ドレスコードがあるようなレストランも入っているホテルなので、私と付き添いのお母さんは今日はバッチリとよそ行き状態だ。
慣れない服に場所で、二人して固くなっているとポンポンと肩を叩かれて振り返ると、そこには金髪の長い髪を後ろに流して、ちょっと軽い感じのお兄さんが立っていた。
「やぁ、久しぶりだね」
その声に私は驚いて目を見張った。
私に声をかけてきたのは、夏休みの一人旅の途中で出会ったサファーのお兄さんだった。
「どうしてここに?」
驚きを隠せないまま、私はお兄さんに聞くとお兄さんはニコッと笑って言った。
「うん?俺はね、このコンテストの審査委員の一人なんだ。カメラマンもしつつ、出版社の編集の仕事もしてるんだよ」
私が写真を撮った相手は、撮ることのプロだったらしい。
びっくりしたままの私に、お母さんが聞いてくる。
「なに、遥香。お知り合いの方なの?」
「お母さん、えっと。夏休みの旅行の時に知り合ったの」
そんな私のしどろもどろな答えを笑って聞きつつお兄さんは名刺をお母さんに差し出して答えた。
「私、〇〇出版社でカメラマンと編集をしております。信楽 龍星と申します」
その名刺には編集とフリーカメラマンの肩書きが書かれていた。
その雑誌は写真系では著名な雑誌で、しかも副編集長と書かれていた。
「プロの方を撮っていたなんて、私が撮って良かったんですか?」
思わず尋ねてしまう私に、信楽さんは笑って言った。
「あの時も言っただろう?君はいいセンスを持っているって」