私は、その後夕飯が出来たと呼ばれるまで、いつになく真剣に考えた。

ゆるっゆるの怠惰大好き人間が、脳みそフル回転である。
私は、何が好きなんだろう?
本を読んだり、ぼーっと何かを眺めたりするのは好きかな。
過ごし方としては、ゆったりしているから。

運動も嫌いではないが、これと言ってやりたいスポーツはない。
勉強も嫌いではない。数学や化学はやや苦手だけれど、英語、国語、社会なんかは好きだし、得意と言える。
なので、進学を意識して現国、古文、英語、小論文、現代社会等が選択科目だし、得意分野が多い。

「かと言って、文系でやりたいことがある訳でもない……」

学校での成績から、とりあえず文系ってだけなのだ。
そう、考えれば考えるだけ自分のことなのに何も思い浮かばない。
その事に、これは良くないんじゃないかと思って私は考えた。
「何がやりたいのか、何が向いてるのか自分探しをしよう!」

そう思い至って、私はこの日珍しく暑い日差しの中を出かける準備をして家を飛び出したのだった。

やる気なしな遥香、初めての自主的行動だった。

そんな遥香はまず初めに図書館へと向かった。
世の中にはどんな職業があるのか、今一度考えてみるには手っ取り早いと思ったからだ。
普段は話題の作品や自分の好きなジャンルの本のコーナーにしか足を向けない私が、今日は普段覗かない書架の前に立った。

「システムエンジニア、建築士、薬剤師、看護師、インテリアデザイナー、カラーコディネーター、介護福祉士、社会福祉士、医療事務、社会労務士、行政書士、弁護士、公務員……」

棚を見て、本をパラパラとめくりあれこれと見るも、心惹かれるような仕事はない。

「動物園の飼育員、学芸員、司書ねぇ。この辺はちょっと興味あるけれど……」

なんてボソボソ言いつつも、たくさんの本を見て行った。