母の知り合いの高原にあるペンションにたどり着いたのは、夕日がだいぶ海に沈み始めた頃だった。
ペンションの前は開けていて、そこからは海も見える。
夏には人気の避暑地で、海にも行きやすく今はシーズン真っ盛り。
それでも泊まれたのは、平日中日だったことと、母とペンションオーナー夫婦が友人だったことだろう。
カントリーなログハウス風の外観で、中は木の温もりに溢れた素敵なペンションなのだ。
一日で泊まれるのは四組だけ、オーナーは有名なホテルレストランでのシェフをしていたので、料理もとっても美味しいのだ。
海と、山と、星空が売りのペンションは今日も満室だった。
「美佐子おば様、お久しぶりです。急だったのに、今日はありがとうございます」
ドアを開けて、迎えてくれたオーナー夫妻の奥様、美佐子さんにそう挨拶する。
「まぁ、遥香ちゃん。すっかり美人なお姉さんになってるわね! これは、康平くんが心配するし、香澄がここに泊まれないかとお願いしてくるわけだわ」
美佐子さんは、お母さんと同じ看護学部の卒業生で、このペンションを始めるまではバリバリの看護師さんだった。
お父さんは同じ大学の検査技師の学部で、三人は同学年でサークルが一緒だったのだという。
そして、お父さんとお母さんは就職先まで同じで、仕事に慣れてきた頃にお付き合いを始めて結婚したんだという。
そんな頃からの知り合いなので、美佐子おばさんとは結構古くから馴染みがあるのだ。
調理場から、浩二おじさんも顔を出してくれた。
「遥香ちゃんいらっしゃい。まず、ご飯食べちゃいなさい。お腹空いただろう?」
浩二おじさんは、言うなればくまさんみたいな体型の朗らかなおじさんだ。
「ありがとう、おじさん。お部屋に荷物置かせてもらってから来るね!」