それでも、私はお祖父ちゃんの写真館が好きだった。
そこに来る人は笑顔が多かったから。

「おぉ、まさか印刷してくれてるとは!いくらだった?」
お兄さんがそう聞いてくる。

「いいの、私はプロでもないし。むしろカメラの練習になったくらいだから、貰ってくれるならそれでいいの」

そんな私に、印刷された数枚の写真を見てから、お兄さんは駐車場に止めてた車に行って戻ってくると、言いながら私にポンと渡してきた額に驚く。

「そんな言い方しちゃダメだ。君のカメラはちゃんと仕事してくれてるし、君もいいセンスをしているよ。そういったものをタダで差し出しちゃダメだ。これは君への感謝と対価だよ」

差し出された額は五千円。
私は受け取れなくって、固まってしまう。
「こんなに頂けません!」
ハッとして声を上げるものの、お兄さんはニコッと笑って言った。
「こういうことは初めてかな?」
その言葉にコクっと頷く。
「じゃあ、尚更受け取って。これは俺が依頼して、君が受けた初めての仕事の報酬ってことで。またいつか出会う為にもね!」

お兄さんの言葉はどれも考えさせられるものだった。
私は、最後の軽い言葉に少し笑いつつも受け取った。
「ありがとうございます。お兄さんのサーフィンの姿は楽しんでいるのが全身から伝わって、カメラで覗いている私も楽しかったです」

そんな私の言葉に、ニコッと笑ってお兄さんは言った。

「うん、楽しいよ。君は本当に才能がありそうだよ。いい出会いだった。こちらこそありがとう」

こうして、私はカメラで初めて人からお金を貰うという経験をした。
その後も休憩を挟んで移動しつつ、景色を撮りながら目的の高原へと移動したのだった。