私は、ちょっと驚きつつそのサファーなお兄さんを眺めて返事をした。
「いいえ、私じゃなくって親がファンなんです」
ちょっと、固めな私の返事もあまり気にせず、お兄さんはニコッと笑って言った。
「そっか、時間はあるの?」
その唐突な問いに、疑問で首をかしげつつも返事をする。
「一応、急いではいないので……」
すると、お兄さんはパァっと顔を輝かせて言った。
「じゃあさ、良かったらそのカメラで波に乗ってるとこ撮ってくれない?」
なるほど、このカメラは私みたいな子が持つには小さいけど機能性は抜群の品だ。
お祖父ちゃんが選んだだけある。
このカメラなら、スポーツ中の動く被写体も追える。
しかも、私には追加の望遠レンズも持っていたりするのだ。
「良いですよ」
そう言うと私はカメラバックから望遠レンズを取り出しセットした。
「めっちゃ本格的だね。カメラが趣味なの?」
「いえ、これは……。そう、カメラが好きなの」
私はそう答えた。
昨日も撮って回って思った。
私はカメラで撮ることが好きだと。
この旅に出て良かったと思う。
「じゃ、俺行くから。撮ってね!」
お兄さんは軽やかに、浜辺に降りていくと砂浜を駆け抜けて海に突入して行った。
その姿は、何だかキラキラしている。
好きが溢れている感じに、波に乗る前から私はお兄さんにカメラを向けて、シャッターを切っていた。
そして、いろんな波に乗ったり、待機している姿なんかを写真に撮った。
小一時間ほどで、お兄さんは浜に戻ってきた。
私は少し離れていたうちに、近くのコンビニに行きその姿を印刷していた。
今は、コンビニで簡単に写真が印刷できる時代だ。
だから、写真館はだんだん少なくなってきてる。