ドキマギしながら智基くんを見ると、彼はキレイな茶色の瞳を細めて少し微笑んだ。

「突然声をかけて驚かせたよね、ごめん。席を探しているんなら、俺の前の席が空いているからどうぞ」

 智基くんが左手で前の席を示し、私を見て促すように顔を傾ける。好きな人の視線を受けて、頭にカーッと血が上った。

 私は緊張しながらも、どうにか口を動かす。

「あ……あ、ありがとう」

 そろそろと歩いて智基くんの前に移動し、彼の前の席にトレイを置いた。椅子に座ると、智基くんが話しかけてくる。

「川口さんも竜田揚げ定食にしたんだね。ここの竜田揚げ、おいしいよね。俺、大好きなんだ」

 智基くんは言って竜田揚げを口に入れた。

「そ、そうなんだ。わ、私は今日初めて食べるんだけど」

 智基くんは竜田揚げを飲み込んでおいしそうに笑う。

「きっとはまるよ」

 智基くんの好きなものを一つ知っちゃった。そんなことを思って嬉しくなる私に、彼が申し訳なさそうに言う。

「あ、俺が驚かせたせいで竜田揚げ、一つトレイに落ちてしまったんだね。俺のをあげるよ」

 智基くんが皿を持ち上げて私の方に差し出した。白い皿の上には半分ほど減ったキャベツの千切りと、竜田揚げが二つのっている。