そう言ってヒールの音を響かせながら智基くんのいるテーブルに駆け寄ってきたのは、同じく経済学部一年生の相田(あいだ)芽衣(めい)さんだった。セミロングの明るい茶色の髪にふわっとしたパーマをかけ、艶やかな唇をした彼女は、人気ファッション誌の読者モデルもしているという。白地に花柄のワンピースと水色のショートジャケットが似合っている。
「うん、空いてるよ」
智基くんは食べようとしていた竜田揚げを箸で挟んだまま、相田さんを見上げた。
「やったぁ。じゃあ、お昼一緒に食べようよ。私、ランチ買ってくるねっ」
弾むような声で言って、相田さんは智基くんの隣の椅子にベージュのバッグを置いた。ブランドのロゴがきらりと光る。
あーあ、先を越されちゃった。
諦めのため息をついて、別の席を探す。けれど、昼休みの食堂は学生たちでいっぱいで、近くに空いている席はない。きょろきょろしながら歩き始めたとき、突然声をかけられた。
「川口さん」
智基くんの低く涼しげな声で呼ばれて、ドキンと心臓が跳ねた。その拍子に手が震えて、トレイの上の食器がガシャッと音を立てる。味噌汁はこぼれなかったけれど、形よく盛られていた竜田揚げが崩れて、お皿から一つトレイに転がり落ちた。
「な、何、横山くん」
「うん、空いてるよ」
智基くんは食べようとしていた竜田揚げを箸で挟んだまま、相田さんを見上げた。
「やったぁ。じゃあ、お昼一緒に食べようよ。私、ランチ買ってくるねっ」
弾むような声で言って、相田さんは智基くんの隣の椅子にベージュのバッグを置いた。ブランドのロゴがきらりと光る。
あーあ、先を越されちゃった。
諦めのため息をついて、別の席を探す。けれど、昼休みの食堂は学生たちでいっぱいで、近くに空いている席はない。きょろきょろしながら歩き始めたとき、突然声をかけられた。
「川口さん」
智基くんの低く涼しげな声で呼ばれて、ドキンと心臓が跳ねた。その拍子に手が震えて、トレイの上の食器がガシャッと音を立てる。味噌汁はこぼれなかったけれど、形よく盛られていた竜田揚げが崩れて、お皿から一つトレイに転がり落ちた。
「な、何、横山くん」