「まったく、芽衣ちゃん……いや、もう友達でもないよ、あんなやつ。あいつはひどい女だった。俺に『ジュースを買ってきて』って頼んでおいて、マロンをひどい目に遭わせるなんて。見抜けなかった俺が愚かだった」

 わかってくれたらいいの。その気持ちを出せない声で一生懸命伝えようとする。

 智基くんは私の頭を愛おしそうに撫でた。

「実織ちゃんのおかげで助かったよ。ホントによかった」

 しみじみと言って、智基くんは私の頬を両手で挟んだ。そうして額を私の額にコツンと当てる。

「……一目惚れだったんだよ?」

 智基くんの言葉が信じられなくて瞬きをした。

 そんな。智基くんが私に一目惚れをしてくれていたなんて……! いったいいつ? 入学式かな? それともマンホールに落ちかけたとき……? 

 ううん、いつでもいい。すごく嬉しいから。

 手に力が入らないので、私は鼻先を智基くんの鼻に擦りつけた。

 もしかしたら恋愛成就の神様が私の善行を見て、願いを叶えてくれたのかもしれない。だとしたら、お礼参りをしなければ。

 幸せで満たされた気持ちで目を閉じたとき、智基くんの声が言った。