遠くで誰かの呼び声がする。悲しげで切羽詰まっていて涙交じりで。

「お願いだ、目を開けてくれ! 医者は手術は成功したって言ってたのに!」

 智基くんの声だ。智基くん、私のことを心配してくれているんだ。

 医者とか手術って言ってたけど……ああ、そうか。私、マロンを助けようとしてトラックに跳ねられたんだ。

 意識がはっきりしてくるにつれて、体のあちこちがズキンズキンと痛みを訴え始めた。トラックにぶつかったときは、何もかもバラバラになったような気がしたけれど、どうやら体はつながっているようだ。でも、痛くて重くて手足が動かせない。声を出したいのに、声が出ない。

 私は大丈夫って言いたいのに。

 もどかしい思いでいると、顔に温かな滴がぽたぽたと落ちてきた。

 ああ、智基くんが泣いている。智基くんが私のために……。彼を泣かせるなんて、ダメじゃない。どうにか目を開けないと……。

 苦労してまぶたを持ち上げた。視界がぼんやりとしていて焦点が合わない。瞬きを繰り返しているうちに慣れたのか、淡いグリーンの天井が見えた。

 ここはきっと病院かな。