どんな部屋なんだろう。古そうな家だったから、和室だろうか。それともフローリングに改装してベッドを置いているのだろうか。そんなところに……智基くんと相田さんがふたりきりでいる……。

 赤い唇が智基くんの耳元に寄せられる。

 嫉妬の炎が赤く激しく燃え上がった。

 嫌だ。絶対に嫌。智基くんを騙しているくせに彼女になろうだなんて許せない。許さない。

 イライラしてたまらず、左手の親指をギューッと噛んだ。



 それからどのくらい時間が経ったのか。ようやく雨が止んだ。雲が切れて明るい日が差してきたが、肌にまとわりつくような湿気が残っていた。神社を出て智基くんの家を目指す。駅前で角を曲がり、しばらく歩いていると、前方の角からマロンの吠える声が聞こえてきた。

 もう散歩に出てるんだ! こっちに歩いてきてる!

 とっさに右手にある小さな公園に飛び込んだ。つつじの生け垣の陰でしゃがんで待っていると、遠くの方で話し声がした。