智基くんがにこやかな表情で何か言って、ふたりで並んで歩き出した。私はゆっくりと校舎から出て、間に何人もの学生を挟みながら、ふたりのあとをつけた。相田さんが何か言って笑い、智基くんの腕を軽く叩いた。その仕草に歯をギリギリと噛みしめる。

 ずるい。智基くんにまたマロンを見せてもらうなんて。

 するい。智基くんに触るなんて。

 私だって好きなのに。

 前方のふたりはそのまま駅に向かい、電車に乗った。私も同じ電車の隣の車両に乗り込む。連結部から覗いたら、智基くんと相田さんは並んで座席に座っていた。相田さんがスマホを取り出して智基くんに見せ、赤い唇を彼の耳元に寄せて何か言う。智基くんがうなずいて笑顔になった。

 智基くん、なにを話してるの? どうして笑ってるの?

 ふたりの楽しげな様子を見るたび、胸の中にどろどろした感情が渦巻く。狂おしいようなその感情に、どうにかなってしまいそうだ。隣の車両に乗り込み、ふたりの間に割って入ってやりたい。その衝動を、拳を握りしめ、歯を食いしばってどうにか押さえつける。ようやく電車が目的の駅に着いたときには、手のひらに爪の跡がくっきりと残っていた。