それからずっと、胸の中で何かがくすぶっていて、モヤモヤして落ち着かなかった。どうしてもふたりのことが気になり、四限目のあと、キャンパスでふたりを探した。智基くんが何の講義を受けていたのかわからなくて、キャンパスをあちこち歩き回る。結局どちらの姿も見つけられず、気がつけば四時半を回っていた。こんな時間までふたりが大学に残っているはずがない……。
突然虚しい気持ちに襲われ、私は重い足取りでバイト先の書店に向かった。
翌日の一限目は必修科目の現代英語一だった。この講義は相田さんと一緒だ。講義室に入ったとき、三十席ほどある講義室に相田さんの姿はなかった。私はふたり掛けの机が並ぶ通路を歩き、空いていたうしろから二番目の席に着いた。バッグからテキストや筆箱を出していたら、ドアが開いて相田さんが入ってきた。講義室を見回す視線が、私の上で止まる。
「あ、おはよう、実織ちゃん」
相田さんは明るい声で手を振って近づいてくる。けれど、デスクの前に仁王立ちになると、私のテキストの上にどんとバッグを置いて、私の顔を覗き込んだ。そうして声を落として言う。
「昨日、智基くんの家に行っちゃった」
「……そう」