「わかった。いいよ。いつにする?」

 その瞬間、胸がモヤッとした。私が一生懸命勇気を出して縮めた距離を、相田さんはまた詰めようとするのだ。

「今日がいいな!」

 相田さんはぴょんと跳ねて一歩智基くんに近づいた。

「え、今日?」
「うん。だって早くマロンちゃんを見たいんだもん」

 智基くんは自分の後頭部を一度撫でて答える。

「……わかった。芽衣ちゃんは今日、何限目まで?」
「私、三限目で終わり」
「俺は四限目までなんだ」
「それじゃ、一緒にランチを食べながら待ち合わせ場所を決めようよ!」

 相田さんが智基くんのジャケットを掴んで軽く引っ張った。

「わかったよ」

 智基くんは相田さんに引っ張られるようにして歩き出す。数歩歩いたところで相田さんが振り返り、私を見て思わせぶりにクスッと笑った。勝った、と言いたげな笑み。私はその場に立ち尽くす。

 私だって智基くんのこと、大好きなんだから。その気持ちは相田さんには負けない。絶対負けない。相田さん、ずるいよ。私の努力に勝手に乗っからないで。私が一生懸命振り絞った勇気の結果をあっさり乗り越えないでよ。