「マロンはうちの犬だよ。ゴールデンレトリバーなんだ」
「へぇ~、そうだったんだ」

 相田さんはそう言ってから、私の腕を取って智基くんに背を向けた。

「どういうこと? 川口さんって……まさかまさか智基くんと付き合ってるの?」

 低い声で問われて、私は相田さんを見た。鋭い目で睨まれて、急いで答える。

「ち、違うよ。そんなわけないじゃない」

 相田さんは私の腕を放した。

「よかった。やっぱりそうだよね。そんなことありえないのに心配して損しちゃった」

 そう言ってすぐに智基くんに向き直る。

「じゃあ、私にもマロンちゃん見せてほしいな!」
「えっと……」

 智基くんが言葉を濁したけれど、相田さんは構う様子もなく言う。

「だって、実織ちゃんにはマロンちゃんを見せたんでしょ? だったら、私に見せてくれたっていいじゃない! それとも実織ちゃんには見せられて、私には見せられない理由があるの……?」

 相田さんが上目遣いで拗ねたような仕草をした。

「いや、そういうわけじゃないよ」
「だったら、私にも見せてくれるよね? いいでしょ? ね、お願~い」

 相田さんは最後はねだるように言った。

 智基くんはどう返事をするんだろう。不安を覚えて胃の辺りが冷たくなってきた。智基くんを見ると、彼はにっこり微笑む。