そっか、このまま直接散歩に行くつもりなんだ。

 私は立ち上がると、手土産に持ってきた紙袋を差し出した。中にはデパ地下で買った箱入りゼリーが入っている。

「あの、これ、つまらないものですが、よかったらご家族で召し上がってください」
「えっ、わざわざありがとう」

 智基くんは驚いたように言って、紙袋を受け取った。

「本当はマロンにもお土産を……と思ったんだけど、普段どんなおやつを食べているか訊いてなかったから……」
「あはは、マロンにまでお気遣いをありがとう」

 智基くんは「お土産、中に置いてくるね」と言って母屋に向かった。そのあとをマロンが追いかけるので、私もゆっくりと続く。母屋の前に着いたときには、智基くんは紙袋を置いて玄関扉から出てきたところだった。

「さ、マロン、行こう」

 智基くんがリードを付け、マロンが嬉しそうに「ワン」と吠えた。数寄屋門から出て駅の方へと進む。

「マロンのいつもの散歩コース」

 智基くんがリードを持ち、その横をマロンが並んで歩く。私は少し遅れてひとりと一匹に続いた。