駅に戻ると三時五分前だった。ちょうど東に延びる大通りから、智基くんが歩いてくるのが見える。

「実織ちゃん」

 私を見つけて手を振ってくれた。私は小さく手を振り、彼の方へと駆け出した。彼の姿が大きくなるにつれて、鼓動も高くなる。

「待たせたかな」
「ううん、大丈夫」

 今日の智基くんはボーダーのTシャツに七分袖の白いシャツを羽織っていて、ベージュのチノパンとスニーカーという爽やかなファッションだ。

 偶然だけど、私は白いカットソーとジーンズに、太いボーダーのカーディガンを合わせている。ボーダーがお揃いなのが、ちょっと嬉しい。

「それじゃ、行こうか。五分くらい歩くんだけど」

 智基くんに促されて歩きながら、考えてきた話題を振る。

「あの……マロンは仔犬のときに智基くんのうちに来たの?」
「うん、そうだよ。九歳のとき、ひとりっ子だった俺が『弟か妹がほしい』って言ったら、両親にペットショップに連れて行かれたんだ。親は小型犬を飼うつもりだったんだけど、俺がマロンに……一目惚れして」

 智基くんが照れたように笑った。