勇気が空回りしてしまった。智基くんの都合も考えずに厚かましいお願いをした自分が恥ずかしくて、スプーンで意味もなくドリアをつつく。

「……いいよ」

 智基くんの声が聞こえてきて、私は顔を上げた。

「え?」
「今度の日曜日なら、俺、バイトもないし。たぶん両親も出かけると思うから、ゆっくりマロンと触れ合える」

 智基くんがいつもの穏やかな笑顔で言った。

「本当?」
「うん」
「嬉しい、ありがとう!」

 さっきまでの恥ずかしさが一気に吹き飛び、声を弾ませて続ける。

「智基くんのゴールデンレトリバー、マロンちゃんって言うんだね! 私が触っても大丈夫かな?」
「うん、大丈夫。老犬だからそんなに長く散歩はできないけど、マロンの調子がよかったら、一緒に散歩に行こう」
「わー、楽しみ」

 思いきって言ってみてよかった! やっぱり指をくわえて見ているだけじゃダメなんだ。勇気を出せば出すほど、いい方向に進んでいく気がする。もしかしてやっと私にも恋愛運が向いてきたんじゃないだろうか。