智基くんに促され、私は「いただきます」と手を合わせてからスプーンを取り上げた。

「川口さんってきちんとしてるんだね」

 智基くんが笑って「いただきます」と同じように手を合わせてから、フォークとスプーンを手に取った。

「なんか……癖かな。両親が結構厳しくて」
「でも、ちゃんと『いただきます』って言うのは大事なことだと思うよ。食べ物とそれを作ってくれた人たちに感謝する言葉だからね」

 智基くんがスパゲッティをフォークに巻きつけて口に運んだ。私もドリアにスプーンを入れる。口に入れるとすごく熱くて、口を金魚みたいにパクパクさせた。

 智基くんがふっと笑みを浮かべる。

「大丈夫?」
「は、はふ……うん」

 熱々のドリアをどうにか飲み込み、照れ笑いを浮かべる。なんでもっといいところを見せられないんだろう。相田さんなら……と彼女の顔を思い浮かべて、ハッとする。

「そういえば……相田さんにCDを借りるって言ってたけど……もう借りた?」
「いいや。明日大学に持ってきてくれることになってるよ」
「あ、そうだよね。今日はバイトだって言ってたもんね」
「うん」

 智基くんはペスカトーレを口に入れて咀嚼していたが、ふと思いついたように口を開いた。