でも、学生食堂での男子学生とのやりとりを見る限り、今のところ智基くんはフリーのようだ。彼女がいるのなら、智基くんの友達であるあのふたりは、あんなふうに相田さんと『お似合いだ』なんて言ったりしなかったはず。だけど、もし智基くんには恋人がいて、みんなに秘密にしているんだったら……?

 その想像に胸が苦しくなり、慌てて打ち消した。そんなはずはない。だって智基くんなら、彼女がいたら、こんなふうに一応“女性”に分類される私とふたりきりで食事に行ったりしないと思う。きっとそういう人だと思うから。

「何を食べようか」

 智基くんが私の方にメニューを向けてテーブルに置いた。カプレーゼ、ラザニア、カルボナーラ、チキンの香草焼き……。どれもおいしそうだ。

「決まった?」
「うん」

 智基くんに訊かれてうなずくと、彼はウエイトレスを呼び、ふたりで注文を伝えた。

 ほどなくして私の前にシーフードドリアが、智基くんの前にスパゲッティペスカトーレが運ばれてきた。どちらも湯気が立ち上り、いい匂いだ。お腹がひもじそうな音を立てそうになり、急いで腹筋に力を入れた。

「じゃ、食べようか」