端整で優しい顔立ちの智基くんと、ふんわりした雰囲気ながら華のある相田さん。ふたりの向かい側に座っている私なんて、男子学生の眼中にないだろう。

 卑屈な気分になったとき、智基くんが私に視線を向けた。

「ごめんね、川口さん。騒がしくて」

 私は驚いて瞬きをした。ほかの男子学生にとって影のような存在になっていた私のことを、智基くんは気にかけてくれたんだ! そのことが嬉しくて、勝手に頬が緩む。

「そ、そんなことないよ。気を遣ってくれてありがとう」

 小さな声でお礼を言った。智基くんは男子学生の背中を押す。

「ほら、あっちの席が空いたぞ」
「おー。んじゃあな」

 ふたりの男子は手をひらひらと振って空いた席に向かい始める。けれど、チラッと振り返って、智基くんと相田さんに意味ありげな視線を投げた。

 智基くんは彼らに顔をしかめて見せてから、ため息をつく。

「まったく。あいつらときたら。相田さんもごめん。変な噂が立ったら困るよね」
「えー、どうして謝るのぉ? 私、智基くんとなら噂になっても全然困らないよ!」

 力説する相田さんは小さく唇を尖らせて、ちょっとすねたような表情だ。