「じゃあ、名前と年齢から教えてもらっていいかな」

 雷蔵からそう言われ、千聖は我に返り、姿勢を正した。

「あっ……はい。羽根田千聖と申します。十八歳です」
「はねだちさとさん、だね。大学生?」
「はい。先日、入学したばかりです」
「そっか。まだ環境に慣れなくて忙しい時期じゃない?」
「地元ですし、そうでもありません。高校生の時からアルバイトしたかったんですけど、校則で禁止されていたので」

 千聖は、家庭の事情により、できるだけ早く働きたいのだと話した。今時、そういう学生も珍しくはないだろう。雷蔵は訝しむことなく聞いてくれた。

「それじゃ、業務内容を説明するね。平日は、レジと品出し・陳列、値札付けとPOP作り、電話対応全般。時給は千円。開店時間は十時から二十時で、勤務時間帯は相談に乗ります。ここまでは大丈夫?」
「はい」

 なかなかの好条件ではないだろうか、と千聖は喜んだ。この周辺での時給は高くても九百円ほどのはずだ。深夜まで働く必要がなければ、家の手伝いもできる。そこまで大変な業務内容でもなさそうなので、千聖はここで働くことを前向きに考え始めた。

「学業に支障がなければ、土日の方を特に入ってもらいたいんだけど……」
「はい。私はもとからそのつもりですが。土日に、何か特別な業務でもあるんですか?」
「ちょっと、いや……かなりびっくりするかもしれない。羽根田さんは、超常現象とか信じる方?」
「……はい?」

 急に、雷蔵の歯切れが悪くなり始め、千聖は首を傾げた。超常現象といえば、超能力とか、幽霊とか、つまり科学的説明ができないもののことだ。店長は最初から不思議なオーラを放ってはいたが、これではもう本当に変な人だ。

「え……? どういうことですか? 超常現象が、週末働くことに何か関係するんですか?」
「まあ、そうだね。業務も大変だけど、その代わり、時給は千五百円になるよ」
「せ、せんごひゃくっ!? 詳しく、聞かせてください……」

 金額につられるのは打算的すぎるかもしれないが、多少身体を張ってでも、稼げるなら稼ぎたい。雑貨店の中で超常現象が起こるなど聞いたこともないが、どんなことでも受け入れてやるというつもりで、千聖は前のめりになった。

「ふふ。肝が据わってるね。言葉で説明すると信じてもらえないだろうし、もしよければ、今週末に一度どんなものか見てみる? お試し研修ってことで、時給の七掛けは出すよ」
「はい、お願いします。一応……確認しますが、危険なものではないですよね?」
「うん。身の安全は保証するし、万が一の時は僕が守るから」

 未だ疑念は残るものの、千聖は雷蔵の言葉を信じることにした。住所と電話番号を彼に伝え、千聖は席を立つ。