最寄り駅から地下鉄で二駅分移動し、十年前に信一が住んでおり、知春がよく通っていたという住宅街へとやってきた。
しかしながら、ここでも信一の手がかりは得られなかった。なぜなら、信一の住んでいたアパートは老朽化のため取り壊され、その敷地はまっさらな売り地と化していたからだ。空っぽの砂地を見て、知春は明らかに肩を落としている。
「あの時、既に築四十年だったはずですし……しょうがないですね」
「尾形さん……」
これでは、知春が信一に会う前に、時間切れがやってきてしまう。他に手はないのかと、千聖は考えを巡らせた。もし、友人たちが行方不明になった時、まずは何から手がかりを得るか。
「あっ! SNS! 境さんって、そういうのはやってなかったんですか? IT系企業にお勤めでしたし、得意分野では?」
これは閃いたとばかりに、千聖は知春に質問した。だが、知春の反応は鈍い。首を緩く左右に振っている。
「いいえ。システム開発に関わってはいましたが、自ら進んでインターネット上に個人情報を公開する人ではなかったです」
「そうですか……」
「聞かれなかったから黙っていましたが、僕の方で、既に主要のSNSで検索ならしましたよ。同姓同名での数件のヒットはありましたが、全員年齢が合致しませんでした」
いつの間に動いていたのか、雷蔵がそう言った。タブレット型端末を手に持ち、結果の画面を見せてくれている。そんなに余裕で構えている場合ではないのだが、雷蔵は分かっているのだろうか。
「でも、このままじゃ今日中に解決できませんよ? どうするんですか?」
「とにかく、お二人の思い出の場所でも何でも、聞き込みをしながら訪ねてみるしかないね。職場が変わっていないなら、まだこの近辺に住んでいる可能性が高い」
「……分かりました。とにかく、急ぎましょう!」
急がなければ、間に合わなくなってしまう。はやる気持ちを抑えながら、千聖と雷蔵は二手に分かれて聞き込みをすることにした。
不審がられたり、無視されたりもしたが、大抵の人は快く答えてくれる。が、人探しが想像以上に大変なことであることを、千聖は思い知らされた。
「境信一さん……? 聞いたことないですね」
「ごめんなさい。知らないです」
「写真がないと、ちょっと分からないかなー」
通行人、住宅街から少し離れた飲食店の店員、交番などもあたってみたが、有力な情報は得られなかった。交番に至っては、警察官から「どうしてその人を探しているの?」と事件性を疑われてしまい、慌てて身分証明をする羽目になってしまったが。
しかしながら、ここでも信一の手がかりは得られなかった。なぜなら、信一の住んでいたアパートは老朽化のため取り壊され、その敷地はまっさらな売り地と化していたからだ。空っぽの砂地を見て、知春は明らかに肩を落としている。
「あの時、既に築四十年だったはずですし……しょうがないですね」
「尾形さん……」
これでは、知春が信一に会う前に、時間切れがやってきてしまう。他に手はないのかと、千聖は考えを巡らせた。もし、友人たちが行方不明になった時、まずは何から手がかりを得るか。
「あっ! SNS! 境さんって、そういうのはやってなかったんですか? IT系企業にお勤めでしたし、得意分野では?」
これは閃いたとばかりに、千聖は知春に質問した。だが、知春の反応は鈍い。首を緩く左右に振っている。
「いいえ。システム開発に関わってはいましたが、自ら進んでインターネット上に個人情報を公開する人ではなかったです」
「そうですか……」
「聞かれなかったから黙っていましたが、僕の方で、既に主要のSNSで検索ならしましたよ。同姓同名での数件のヒットはありましたが、全員年齢が合致しませんでした」
いつの間に動いていたのか、雷蔵がそう言った。タブレット型端末を手に持ち、結果の画面を見せてくれている。そんなに余裕で構えている場合ではないのだが、雷蔵は分かっているのだろうか。
「でも、このままじゃ今日中に解決できませんよ? どうするんですか?」
「とにかく、お二人の思い出の場所でも何でも、聞き込みをしながら訪ねてみるしかないね。職場が変わっていないなら、まだこの近辺に住んでいる可能性が高い」
「……分かりました。とにかく、急ぎましょう!」
急がなければ、間に合わなくなってしまう。はやる気持ちを抑えながら、千聖と雷蔵は二手に分かれて聞き込みをすることにした。
不審がられたり、無視されたりもしたが、大抵の人は快く答えてくれる。が、人探しが想像以上に大変なことであることを、千聖は思い知らされた。
「境信一さん……? 聞いたことないですね」
「ごめんなさい。知らないです」
「写真がないと、ちょっと分からないかなー」
通行人、住宅街から少し離れた飲食店の店員、交番などもあたってみたが、有力な情報は得られなかった。交番に至っては、警察官から「どうしてその人を探しているの?」と事件性を疑われてしまい、慌てて身分証明をする羽目になってしまったが。
