そんな話をしているうちに駅前までやってきた。

 ロータリーには客待ちのタクシーが何台か止まっていて、運転手さん達が暇そうに立ち話をしている。

 住宅街を往復するコミュニティバスがちょうど出発したところで、他にほとんど人がいない。

 バス停のすぐ横にアイス屋さんがある。

 黒板式の立て看板がお店の前に置かれている。

 カップに盛られたアイスにフルーツがトッピングされた絵が色チョークで描かれている。

 自動ドアが開くと、店内にはうちの高校の女子生徒グループがもう何組か並んでいた。

 ショーケースの中には二十種類くらいのフレーバーが並んでいて、店員さんの手書きポップで説明が書いてある。

 並んで注文を待っている女子達が、「このポップめっちゃカワイイ」なんて言いながら写真を撮っている。

 窓際のカウンター席にも、お互いのアイスの写真を撮り合ってはしゃいでいるグループがいて、お店は結構流行っているようだった。

 僕はこういうお店が苦手だ。

 どうやって注文したらいいのか分からない。

 異世界へ通じる扉を開けるには特別な呪文を唱えなければならないのだ。

 フラペチーノは珈琲屋さんだったっけか。

「あそこに書いてあるよ」

 西上さんがカウンター奥の壁を指す。

 やっぱり、なんでもお見通しのようだ。

 まあ、イッショニイッテイッショニタベルが外国語に聞こえるような男子だってバレてるからか。

 説明書きによれば、まず、コーンかカップを選ぶようだ。

 次に、基本のアイスフレーバーを選ぶ。

 シングル、ダブル、トリプル、マルチと、個数が多くなるらしい。

 それからトッピングを選ぶらしいんだけど、これがなんだかまるで理解不能だ。

 ニューヨークチーズケーキ、トロピカルスペシャル、お花見パーティー、フラワーガーデン。

 これってトッピングのことなのか?

 僕は前の方で品物を受け取っている女子の様子を観察してみた。

 コーンの上に薔薇の花束みたいにアイスが並んでいて、ふわふわのメレンゲを液体窒素で瞬間凍結させた綿アメみたいなものがのっかっている。

 なんだよ、これ、宇宙人の食べ物じゃんか。

 ここって地球だよね。

「あんたさ、あそこの番号で選べるおすすめにしたら?」

 吉崎さんが僕の背中をつついて、いいものを教えてくれた。

 レジ横にポップが立っていて、『当店人気ベスト3!』と紹介されている。

 正直助かる。

 なんだったら、『非モテ男子スペシャル』とか作ってほしいくらいだ。