「ごめんね、待った?」
西上さんが首をかしげながら微笑んでいる。
制服の襟についたバッジは二年F組だ。
「三階から二階に来るのって、結構面倒だね」
わざわざ迎えにきてくれたのか。
僕の……カノジョだから?
「二年生でも同じクラスになれればよかったのにね」
西上さんの嘆きに、吉崎さんが横から口を挟む。
「これを機会に別れちゃえば」
よけいなことを言わないでください。
「聞いてよ。こいつ、また寝ぼけてたんだよ」
「あいかわらず治らないね」
「でしょう。デコピンして目を覚まさせてやろうよ」
「え、やだよ」
顔を隠そうとする僕に二人が手を出す。
「誰のせいだと思ってんのよ」
吉崎さんの言葉に、西上さんが続ける。
「犯人は……」
二人のデコピンが同時に炸裂した。
「オマエダ!」
はいはい、僕のせいですよ。
おかげで目が覚めました。
「でもさ、去年、こいつが寝ぼけてたせいであんたら二人くっついたんでしょ」
吉崎さんが僕らを交互に指さす。
照れた西上さんが黒髪のカーテンで顔を隠す。
髪の間からはみ出た耳が真っ赤だ。
「自己紹介の時に、ニシガミとシニガミを間違えるなんてさ、ほんと失礼だよね。ていうかさ、あんた、わざと狙ってた?」
そんな余裕ないですよ。
「実はわざと失礼なことをして気を引いておいて、おわびの印にアイスをおごる作戦だったとか?」
いや、あの、どうしたら、そんな話に展開するんですか。
新展開って、死神の逆位置だったっけか。
吉崎さんは興奮気味にだんだん声が大きくなっていく。
「あんたにしてはすごい高度なテクニックだよね。師匠と呼ばせてよ。マエダだけに恋愛マエストロとか?」
『マエ』しか合ってないよ。
「あ、センス悪いとか笑ってるでしょ」
いちおう首を振ったけど、吉崎さんにまたデコピンを食らってしまった。
西上さんの名前を間違えて恥をかいた自己紹介から一年がたっているのか。
西上さんが首をかしげながら微笑んでいる。
制服の襟についたバッジは二年F組だ。
「三階から二階に来るのって、結構面倒だね」
わざわざ迎えにきてくれたのか。
僕の……カノジョだから?
「二年生でも同じクラスになれればよかったのにね」
西上さんの嘆きに、吉崎さんが横から口を挟む。
「これを機会に別れちゃえば」
よけいなことを言わないでください。
「聞いてよ。こいつ、また寝ぼけてたんだよ」
「あいかわらず治らないね」
「でしょう。デコピンして目を覚まさせてやろうよ」
「え、やだよ」
顔を隠そうとする僕に二人が手を出す。
「誰のせいだと思ってんのよ」
吉崎さんの言葉に、西上さんが続ける。
「犯人は……」
二人のデコピンが同時に炸裂した。
「オマエダ!」
はいはい、僕のせいですよ。
おかげで目が覚めました。
「でもさ、去年、こいつが寝ぼけてたせいであんたら二人くっついたんでしょ」
吉崎さんが僕らを交互に指さす。
照れた西上さんが黒髪のカーテンで顔を隠す。
髪の間からはみ出た耳が真っ赤だ。
「自己紹介の時に、ニシガミとシニガミを間違えるなんてさ、ほんと失礼だよね。ていうかさ、あんた、わざと狙ってた?」
そんな余裕ないですよ。
「実はわざと失礼なことをして気を引いておいて、おわびの印にアイスをおごる作戦だったとか?」
いや、あの、どうしたら、そんな話に展開するんですか。
新展開って、死神の逆位置だったっけか。
吉崎さんは興奮気味にだんだん声が大きくなっていく。
「あんたにしてはすごい高度なテクニックだよね。師匠と呼ばせてよ。マエダだけに恋愛マエストロとか?」
『マエ』しか合ってないよ。
「あ、センス悪いとか笑ってるでしょ」
いちおう首を振ったけど、吉崎さんにまたデコピンを食らってしまった。
西上さんの名前を間違えて恥をかいた自己紹介から一年がたっているのか。