ぼんやりしていたら西上さんに腕をつつかれた。

「前田君は何にするの?」

 僕は呪文を唱えた。

「カップのボルケーノでピスタチオベースに、チェリーソースのチーズケーキ。コットンキャンディースプレーのレインボーをトッピング」

 西上さんは驚愕の表情で僕を見ていた。

「どうしてそれを?」

「他に知らないから」

「食べたの?」

 食べたっけ?

 いや、僕は食べていない。

 夢の中で、一口あげるよと言われて、僕はことわったんだった。

 火山の形のアイスを食べたのはキミだよね。

「そう、食べたのは私」

 西上さんの笑顔が瞬間凍結する。

 視界がぐにゃりと回転を始める。

 タベタノハ、ワタシ。

 凍りついた西上さんがロボットのように口だけを動かしてしゃべり出す。

 ワタシ、シニガミデスカラ。

 逆位置。

 ワタシ、ニシガミデスカラ。

 正位置。

 タベタノハ、ワタシ。

「私にアイスを食べさせたのはオマエダ君、キミだよ」

 ワタシニアイスヲタベサセタノハ、キミダヨ。

 そうだ。

 犯人は……。

 西上さんの顔が僕の顔と入れ替わる。

 ハンニンハ……。

 僕自身が僕を指さす。

 オマエダ!

 そう、犯人は僕だ。

 僕が犯人なんだ。

 風景が色を失い、白くなっていく。