風が吹き抜ける。
桜の花が舞う。
幻のような景色が僕の夢想をぐしゃぐしゃにかき混ぜていく。
風に乗ってふわりといい匂いがした。
僕はこの香りを知っている。
……マエダ君。
前田君。
オマエダ!
え?
「ねえ、前田君」
振り向くと彼女がいた。
西上さんだ。
「は、はい」
「そこに立ってると邪魔だよ」
「あ、ごめん」
どれだけの時間が過ぎていたんだろうか。
つまらない夢のことでぼんやりと歩道の真ん中に立ち尽くしていたらしい。
「前田君て、いつもそんなにぼんやりしてるの?」
「ああ、いや、そういうつもりはないんだけどね」
彼女が僕の名前を覚えていてくれたことに驚いてしまって、しどろもどろになってしまった。
そんな僕の気持ちを見透かしたかのように、彼女が僕に向かってほほえみかけてくれた。
「初日からあんなに目立ってたらね」
ああ、まあ、お恥ずかしいことで。
「ある意味、いい自己紹介だったんじゃないの」
よかったんだろうか。
まあ、彼女に名前を覚えてもらえたんだから、大きな一歩か。
「ねえ、どんな夢を見てたの?」
無邪気に僕を見つめる目を見返すことができない。
キミの夢だよ。
なんて言えるわけがない。
「いや、まあ、アイス食べる夢」
「スイーツ男子?」
「いや、あんまり甘い物はたくさん食べられないかな」
西上さんが笑う。
「へんなの。好きでもないのにそんな夢見るんだね。あ、悪夢とか? それでうなされちゃった?」
彼女が歩き出したので、僕も「うん、まあ」と曖昧な返事をしながらついていった。
並んで歩いていいのだろうか。
弱気な自分が顔を出す。
僕は心の中からそいつを追い出した。
いいじゃないか、同級生なんだから。
せっかく話しかけてくれたんだし。
西上さんが僕を見て、微笑んでくれる。
べつに嫌がられてはいないようだ。
桜の花が舞う。
幻のような景色が僕の夢想をぐしゃぐしゃにかき混ぜていく。
風に乗ってふわりといい匂いがした。
僕はこの香りを知っている。
……マエダ君。
前田君。
オマエダ!
え?
「ねえ、前田君」
振り向くと彼女がいた。
西上さんだ。
「は、はい」
「そこに立ってると邪魔だよ」
「あ、ごめん」
どれだけの時間が過ぎていたんだろうか。
つまらない夢のことでぼんやりと歩道の真ん中に立ち尽くしていたらしい。
「前田君て、いつもそんなにぼんやりしてるの?」
「ああ、いや、そういうつもりはないんだけどね」
彼女が僕の名前を覚えていてくれたことに驚いてしまって、しどろもどろになってしまった。
そんな僕の気持ちを見透かしたかのように、彼女が僕に向かってほほえみかけてくれた。
「初日からあんなに目立ってたらね」
ああ、まあ、お恥ずかしいことで。
「ある意味、いい自己紹介だったんじゃないの」
よかったんだろうか。
まあ、彼女に名前を覚えてもらえたんだから、大きな一歩か。
「ねえ、どんな夢を見てたの?」
無邪気に僕を見つめる目を見返すことができない。
キミの夢だよ。
なんて言えるわけがない。
「いや、まあ、アイス食べる夢」
「スイーツ男子?」
「いや、あんまり甘い物はたくさん食べられないかな」
西上さんが笑う。
「へんなの。好きでもないのにそんな夢見るんだね。あ、悪夢とか? それでうなされちゃった?」
彼女が歩き出したので、僕も「うん、まあ」と曖昧な返事をしながらついていった。
並んで歩いていいのだろうか。
弱気な自分が顔を出す。
僕は心の中からそいつを追い出した。
いいじゃないか、同級生なんだから。
せっかく話しかけてくれたんだし。
西上さんが僕を見て、微笑んでくれる。
べつに嫌がられてはいないようだ。