「おい、次は誰だ? ……ええと、マエダか。入学早々、ぼんやりしてんなよ」
変な妄想にひたっていたせいで先生に怒られてしまった。
担任の岡島先生はプロレスラー体型の体育教師で、入学式のために着ているスーツがパンパンだ。
着心地が悪いのか、さっきから肩を上げ下げして教師なのに落ち着きがない。
「あ、すみません!」
僕はあわてて立ち上がった。
いきなりみんなに苦笑されてしまった。
ものすごく緊張してしまう。
「前田圭介です。高森北中出身です。中学の時は生物部でした。よろしくお願いします」
ざわついていた空気がまた静まる。
無難だ。
声が裏返ることもなかった。
これでいい。
目立つことはないのだ。
空気こそ理想。
さわやかな春のそよ風とは言わない。
無でいいのだ。
何かを求めているわけではない。
何事もなく三年間を無事に過ごせればそれが最上だ。
座る時に、椅子を確かめるふりをしながら左隣の彼女をチラ見した。
残念ながら、うつむいたまま黒髪カーテンで顔を隠していて、僕の方を見ていてはくれなかった。
正直さっきの微笑みを期待していたけど、非モテ男子の分はわきまえている。
『いちいちこっち見ないでくれる』なんて言われたら最悪だ。
無関心でいてくれればそれでいい。
排除されないこと。
無でいいのだ。
それが非モテ男子の生きる指針なのだから。
僕の後にも何人かの生徒の退屈で無難な自己紹介が続いた。
ほとんど拍手すら起こらなくなってきたところで、左隣の彼女が立ち上がった。
「シニガミ……です」
え?
本名なの?
僕は思わず叫んでいた。
「シニガミさん!?」
教室が一瞬静まったかと思うと、大爆笑がわき起こった。
「シニガミって」
「んなわけあるかよ」
「めっちゃ失礼じゃん」
「どういうソラミミだよ」
え?
シニガミさんじゃないの?
変な妄想にひたっていたせいで先生に怒られてしまった。
担任の岡島先生はプロレスラー体型の体育教師で、入学式のために着ているスーツがパンパンだ。
着心地が悪いのか、さっきから肩を上げ下げして教師なのに落ち着きがない。
「あ、すみません!」
僕はあわてて立ち上がった。
いきなりみんなに苦笑されてしまった。
ものすごく緊張してしまう。
「前田圭介です。高森北中出身です。中学の時は生物部でした。よろしくお願いします」
ざわついていた空気がまた静まる。
無難だ。
声が裏返ることもなかった。
これでいい。
目立つことはないのだ。
空気こそ理想。
さわやかな春のそよ風とは言わない。
無でいいのだ。
何かを求めているわけではない。
何事もなく三年間を無事に過ごせればそれが最上だ。
座る時に、椅子を確かめるふりをしながら左隣の彼女をチラ見した。
残念ながら、うつむいたまま黒髪カーテンで顔を隠していて、僕の方を見ていてはくれなかった。
正直さっきの微笑みを期待していたけど、非モテ男子の分はわきまえている。
『いちいちこっち見ないでくれる』なんて言われたら最悪だ。
無関心でいてくれればそれでいい。
排除されないこと。
無でいいのだ。
それが非モテ男子の生きる指針なのだから。
僕の後にも何人かの生徒の退屈で無難な自己紹介が続いた。
ほとんど拍手すら起こらなくなってきたところで、左隣の彼女が立ち上がった。
「シニガミ……です」
え?
本名なの?
僕は思わず叫んでいた。
「シニガミさん!?」
教室が一瞬静まったかと思うと、大爆笑がわき起こった。
「シニガミって」
「んなわけあるかよ」
「めっちゃ失礼じゃん」
「どういうソラミミだよ」
え?
シニガミさんじゃないの?