風が吹いて、桜の花びらが舞う。

 背中がぞくっとした。

 振り向くとそこには西上さんがいた。

 あれ、どうしてここに。

 さっき駅前で別れたはずなのに……。

「言ったでしょう」

 彼女はにっこりと笑みを浮かべた。

「私、死神ですから」

 そのとたん、彼女の笑顔が回転を始めて逆さまになった。

「私、ニシガミですから」

 タロットカードが逆さまになるように彼女の顔がひっくり返る。

 ワタシ、シニガミデスカラ。

 正位置、逆位置。

 ワタシ、ニシガミデスカラ。

 ワタシ、シニガミデスカラ。

 動画の逆再生のようにまわりの景色まで流れ出す。

 僕と西上さんだけが立ち止まったまま、まわりの風景から色が失われていく。

 キミハボクノシニガミ。

 ワタシ、シニガミデスカラ。

 逆さまになった西上さんの微笑みがどろどろに溶けはじめた。

 キミハボクノシニガミ。

 犯人は……。

 オマエダ!

 うわああああああああ!

 僕は叫び声を上げていた。

 ……マエダ君。

 前田君?

 マエダ!

 オマエダ!

「はい!?」

 僕は立ち上がっていた。