「こいつさ、ハシビロコウみたいじゃない?」

 なんでいきなり灰色の動かない鳥の話が出てくるんだよ。

 吉崎さんの問いかけに西上さんがスプーンをくわえたままうんうんとうなずく。

「孤高な感じ?」

「えー、そんなにいい意味じゃなくって。『うわ、そこにいたの?』みたいな感じ。ちょっと、マエダ、あんたさ、クチバシのばしてみてよ」

「そんなのついてないし」

「ほらね、ノリ悪いでしょ」

 僕みたいなのと比べられて、なんだか灰色の鳥に申し訳ない。

 西上さんが僕に微笑む。

「なんか、古墳とかに詳しそうだよね」

 すかさず吉崎さんがつっこむ。

「顔がハニワだから?」

「彩色壁画系装飾古墳巡りとかしてそう」

 ていうか、西上さんの方が詳しそうですけど。

 そもそも僕は古墳なんて興味ないし。

「古墳なんて知らないよ。昔の人のお墓だってことくらいしか。彩色なんとかって、西上さんの方が詳しいじゃん」

「お墓に詳しいって、私がシニガミだから?」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

 そんなこと言ってませんって。

 言葉とは逆に、そんなに怒っている表情ではないから、ここはノリで押し切るのが正解なんだろう。

「ごめん。機嫌直してよ。一口あげるからさ」

 僕はアイスを差し出した。

「じゃあ、いただきまあす」

 西上さんは機嫌良くアイスを削り取って口に入れた。

 ブルーベリーソースが固まってシャリシャリした食感になっている部分だ。

「それ、おいしいね。当たりだ」

 笑顔の西上さんの横で吉崎さんの眉間に皺が寄っている。

 今度はなんなんですか。

「仲いいね、あんたら」

 いや、今日知り合ったばかりですけど。

「あたしにはすすめてくれないんだね。さっきはいやがってたしさ」

 いや、いくらでもどうぞ。

 なんなら全部差し上げます。

 だいたい、なんで吉崎さんが不機嫌になるんだよ。

 僕の心の声がだだ漏れだったらしく、ほおづえをついて壁を向いてしまった。

「まったく誰のせいだと思ってるのよ」

 すると、西上さんが「犯人は……」と言いかけたところで止めた。

 と、次の瞬間、吉崎さんが振り向くと同時に、二人でスプーンを僕に向かって突き出した。

「オマエダ!」

 なんだよ、息がぴったりじゃないか。

 二人ともお行儀悪いけどね。