ちょうど吉崎さんのアイスができあがった。

 コーンの上がラッパみたいに開いた皿の形になっていて、中央の穴に三角形のチーズケーキが差し込まれている。

 そのまわりに四種類のアイスが薔薇の花束のように並んでいて、ピンク色のチョコスプレーがまんべんなくかけられていた。

 これ、もう、アイスじゃないな。

 美術館に展示されていても納得しそうだ。

 次に西上さんのが出てきた。

 カップにピスタチオジェラートが山のように盛られていて、てっぺんがへこんでいる。

 ボルケーノというのは火山という意味なのか。

 火口の部分には七色の綿あめがのせられていて、噴煙にかかった虹みたいだ。

 火山の斜面にチェリーソースのかかったチーズケーキが突き刺さっている。

 着陸に失敗した宇宙船みたいだ。

 食べ物で遊ぶなと怒られるやつだ。

 最後に僕のが出てきた。

 コーンにアイスが四段のっかっていて、下からスプレーチョコ、次にブルーベリーソースをふきつけたもの、三段目には砂糖細工のレインボーが巻いてある。

 一番上に木の枝のようなチョコが何本もさしてあって、それを土台にして巨大な綿あめがのっかっている。

 聖火リレーでも始まるんだろうか。

 注文したのは僕だけど、これ、どうやって食べるの?

 僕たちは落としたり崩したりしないように注意しながら客席に移動した。

 狭い通路を縫うように歩いていると、女の子達が僕のことをチラ見してひそひそ話をしていた。

 分かってますよ。

 全然似合わないって。

 落とさないようにするのが精一杯で余計なことを気にする余裕がなかった。

 一番奥のテーブルが空いている。

 壁際のソファ席に女子二人が並んで座って、向かい側の椅子に僕が座った。