僕たちの番が来た。

 まずは吉崎さんが注文する。

「コーンの花束セットで、ベリー系四種で……、それで、ニューヨークチーズケーキと桜チョコチップ、以上で!」

 ふうん、女子っぽい。

「なによ、意外と、とか言うな!」

 いや、言ってないって。

 次は西上さんだ。

「カップのボルケーノでピスタチオベースに私もニューヨークチーズケーキ……、あ、ええと、チーズケーキはチェリーソースにしてください。あと、コットンキャンディースプレーのレインボーをお願いします」

 僕はシンプルに、「三番のセットで」とレジ横のポップを指すのが精一杯だった。

「なんで一番にしないのよ」

 吉崎さんににらまれる。

 だって、一番のはフルーツが山盛りで、おそらく外の看板の絵になってるやつなんだろうけど、あんまり好みじゃないんだよな。

「やっぱり三番でいいです」

「お会計を先にお願いします。三点で三千二百四十円になります」

 たかがアイスなのに?

 財布が死んだ。

 まさにキミは僕の死神だったんだね。

 レジ横のカウンターに移動する。

 注文を受けてから一つ一つ作るので、相当時間がかかるらしい。

 店内を見渡すと、壁の一部が鏡になっていて、僕の顔が映っていた。

 にやけた顔が自分じゃないみたいだ。

 誰だ、おまえは?

 オマエダか?

 こんなゆるんだ表情の自分を見たのは初めてだ。

 自分の顔が直視できなくて、僕はすぐに視線をそらした。

「ねえ、あれ、タロットってやつだね。占いのカードだよね」

 吉崎さんの指す方の壁には、額縁に入ったカードが飾られていた。

 僕には分からないけど、おしゃれなインテリアなんだろう。

 トランプとは雰囲気の違った絵が描いてある。

「右下のが死神のカードですよ」

 西上さんが指したのは、大きな刃のついた草刈り鎌を担いだ骸骨の絵のカードだった。

 でも、絵が逆さまだ。

 死神がひっくり返っている。

 間違って飾ってしまったんだろうか。

 よく見ると、鎌の刃の部分にIIIXと記されている。

 ローマ数字ってやつだ。

 逆さまということはXIIIで13という意味なのか?

 西洋では不吉な数字だったっけ?

「あれは逆位置っていって、カードの意味が反対になるんですよ」

 西上さんの解説に吉崎さんが聞き入っている。

「へえ、ということは?」

「死の反対で、再生とか、新展開、名誉挽回とか」

「ふうん、良い意味になるんだね。だからわざと逆さまに飾ってあるのか」

 僕を通り抜けて女子二人だけで会話が盛り上がる。

「中国でも、『福』という漢字を逆さまに飾るんですよね」

「へえ、なんで? 不幸になりそうじゃん」

「『倒れる』という漢字と、来るって言う意味の『至る』が同じ発音だから、福が倒れて逆さまになると、『福が来る』っていう意味になるんですよ」

「東洋と西洋なのに、占いの理屈が似てるっておもしろいね」

 吉崎さんは感心したように何度もうなずいていた。