「ぶっ……! お前馬鹿だろー!」
「いやさ、だって普通におばけかと思うじゃん!」
「いやいやねーわ、まじうける」

朋君と高校までの道のりを共にする中で、昨日の出来事を軽く教えた。変なおじさんに会ったことと、そのあと不気味な男の子に会ったこと。

「そういえばさ、うちの学校の生徒会長、時田って名字じゃなかった? そいつじゃねーの?」
「いやいやいや、時田先輩って完璧超人じゃん。そんな感じじゃなかったよ! 暗くて不機嫌そうで、全然笑わなかったし。ていうか男子高の制服着てたし、2年って書いてたし!」
「ふーん。この辺の男子高っつったらあそこだろ? そこ行ってる友達に聞いてみるわ」
「あ、うん。お願い」

朋君がスマホを操作すると、すぐに通知音が鳴った。

「……まじか」

朋君は画面を傾けて私に見せる。

『おんなじ学年に時田奏太っている?』
『誰? 聞いたことない』

「わーーー! ほらやっぱり! おばけなんじゃん!」

朋君にしがみつく。夏の朝だというのに寒気がする。朋君はそんな私を見て余計笑った。

「今度俺もそこに連れてけよ。おばけ見たい」
「それはだめ! あそこは秘密の場所だから」
「ああそうだな。じゃ、もう危ないから行くのやめとけ。おっさんとおばけが出没するなんて明らかにやべー場所だろ」
「うーん」

おばけはともかく、おじさんは危なそうな雰囲気ではなかった。むしろ人当たり良さそうだったし、またねと言って別れたし。

でもそういうことを言っても、実際におじさんと話してない朋君には分かってもらえないだろうから、黙っておく。