あっという間に、表題作以外の短編を読み終わった。

さすが小説家といった具合に、文章は読みやすくて内容がすらすらと頭に入っていった。

ネットの記事に書いていた通り、どれもハッピーエンドだった。ネタ切れで悩んでいたのを思わせないような、いままで悲惨な話しか書いていないなんて信じられないほどに、ハッピーでわくわくが詰まった話だった。

とくに、『こころのはる』は、とてもよかった。人のこころを可視化できる女の子が主人公の話だった。主人公の描写がたまに私と重なるところがあって、おじさんとの日々が懐かしくなった。

残念だったのは、手がかりのようなものはなにもなかったこと。

「うーん」

残されたのは、死の間際に書いた『死んだ僕の愛する人へ』という話。

おじさんの真実を知りたいような知りたくないような複雑な気持ちで、躊躇しながらもゆっくりとページをめくった。