と、そう言い残しアルフは天幕の外へ出ていった。
「遅い」
「あー、そんな顔するなよ」
 アルフが外に出るとそこには一人の少女がいた。長い金髪を二つ縛りにした青い目の少女で、彼女もユストやアルフと同じように青い法衣を着ていた。
 少女の名前はエイプリル。ユストたちと同じ特務八課の人間である。
「文句ならユストに言えよ。俺はちゃんとやってる」
「あいつに言っても無駄でしょ? 何言っても笑ってるだけなんだから」
 エイプリルはそう言うと大きなため息をつく。
「あいつはほんと、何考えてんだかさっぱりわかんないのよね」
「悪い奴じゃないんだがなぁ」
「悪い奴じゃないだろうけど、狂ってるわよ」
 二人は並んで話をしながらユストの来るのを待っていた。そんな二人のもとへ準備を終えたユストが小走りで現れる。
「優しい狂人のお出ましだな」
 優しい狂人。それはユストのあだ名であり、彼のことを最も正確に表した言葉だろう。
「お待たせしました。では、行きましょうか」
 二人のもとへやって来たユストはエイプリルの横に並ぶ。三人は横一列に並び眼下に広がる景色に目を向ける。
 そこには深く濃い霧が立ち込めていた。そして、霧の中には隠れて見えないが町が一つあるはずだ。
「ったく、どうして私たちがどっかの馬鹿の後始末なんかしなくちゃなんないの」
「そう言うなよ。これが俺たちの仕事なんだから」
 今回の仕事は町を覆い尽くしている原因不明の霧の調査と発生源の特定、そしてそれらの排除である。すでにある程度の事前調査は終わっているが、内部にはどんな危険があるのか定かではないため、実力者であるユストたちが調査