徒である。名前はアルフ・アルクルア。ユストと同じぐらい背の高い、三十代後半の男だ。
「ありがとうございます、アルフさん」
「礼はいいからさっさと準備してくれ。俺はもう万端だ」
「わかりました。では、レリナさん。また後で」
 そう言うとユストは席を立ち、レリナに対して会釈すると天幕の外へ出ていった。
 残ったのはレリナとアルフだ。アルフは一度タバコを吹かし、それからあまり手入れのされていない長髪の生えた頭を掻く。
「ったく、あの男は何を考えてんだかんぁ」
 と言ってアルフはレリナの方に目を向けた。
「こんなお嬢さんをこっち側に引き込んで」
 アルフの視線にレリナは戸惑う。その目はレリナを憐れんでいるような、そして迷惑そうな目をしていた。
「あ、あの」
「ああ、気にするなよ。お前さんは悪くない。悪かったのは運だけだ」
 そう言うとアルフはまたタバコを吹かす。紙巻きたばこの灰が地面に落ちる。
「苦労するよ、これから。大丈夫?」
「え、ええと。それは……」
 苦労する。それがどの程度の苦労なのかレリナにはわからない。だが、どんな苦労であろうともあの国、ポルス王国にいたときよりはマシだろうとレリナには思えた。
「が、がんばります」
「がんばってどうにかなる問題でもないんだが。ま、がんばりなよ」
 アルフはたばこを吸い終えると吸い殻を地面に落とし、念入りに靴の裏で踏みにじる。
「お前さんはここで大人しく待ってなよ。間違っても外になんて出るんじゃないぞ」